経理・受発注業務の効率化6 分で読めます

請求書処理の工数はどこで消えるのか — 月 100 枚の内訳を分解する

請求書処理の効率化というと入力の自動化に目が向きますが、実際に時間を食っているのは入力の前後です。月 100 枚を処理する経理業務を 8 つの作業に分解し、どこから手を付けると効くのかを試算します。

ダッシュボード。今月の取込件数・帳票種別の内訳・要確認・エラーのカードが並んでいる
残っている作業が件数で見えると、締めまでの残りを事前に把握できます。

「入力に時間がかかっている」は、たいてい正しくない

請求書処理の効率化を検討するとき、最初に候補に挙がるのは入力の自動化です。しかし実際に作業を分解すると、キーボードを叩いている時間は全体の一部で、その前後の作業が大半を占めていることがよくあります。

ここでは、月に 100 枚の請求書・納品書を処理している経理担当 1 名の業務を想定して、作業を 8 つに分けて時間の行き先を見ます。数字は特定の企業の実測ではなく、業務を分解して考えるための試算として置いています。自社の数字に置き換えて読んでください。

8 つの作業に分解する

  1. 受け取る: メールを開き、添付を保存し、共有フォルダへ置く
  2. 仕分ける: 請求書か納品書か注文書か、どの取引先かを判断する
  3. 入力する: 日付・取引先・金額・明細を Excel や会計システムへ打つ
  4. 検算する: 打った内容が元帳票と合っているか目で確かめる
  5. 突き合わせる: 請求金額が納品の実績と合っているかを確認する
  6. 整形する: 集計表の形へ列を並べ替え、不要な列を消す
  7. 探す: 「あの会社の先月分」を後から探し出す
  8. 催促する・待つ: 届いていない帳票を追いかける

このうち、いわゆる AI-OCR が直接短くするのは 3 の入力だけです。1 枚あたり 3 分として、100 枚で 5 時間。これがゼロになれば大きいですが、残りの 7 つが手つかずなら、体感は「少し楽になった」で終わります

消えている時間の正体

受け取りと仕分け(1・2)

1 枚あたり 1 分でも、100 枚で 1 時間 40 分です。しかもこの作業は、締めの直前に集中します。さらに厄介なのは、この工程は自動化しないと漏れが検知できないことです。受信箱に埋もれた 1 通は、締めの後で「その請求書、まだですか」と言われて初めて見つかります。

ここへの対処は、専用アドレスへの自動転送です。取引先からのメールを転送するルールを一度設定すれば、以後は届いた時点で取り込まれ、担当者がメールを開く必要がなくなります。取り込みの結果が一覧に出るので、届いていないものも見えます。

検算(4)

見落とされがちですが、ここは入力と同じかそれ以上に時間を使います。AI-OCR を入れたのに工数が減らない現場の典型が、「AI の結果を信用しきれず、結局全件を目視で検算している」という状態です。これでは入力が読み合わせに置き換わっただけです。

対処は、確認すべき箇所を絞れる仕組みを持つことです。項目ごとの確からしさが示されれば、確認は全件から一部へ変わります。100 枚 × 40 項目 = 4,000 セルのうち、確認が必要なのが 200 セルなら、検算にかかる時間は桁で変わります。

突き合わせ(5)

請求書の金額が納品の実績と合っているかの確認です。多くの現場で、時間がかかりすぎるために実質的に省略され、請求書を信じて支払っています。過払いが起きても気づけない状態です。

自動化されていれば、差異のある取引だけが並びます。差異がなければ確認は不要、あれば明細のどこがずれているかまで降りていける、という形になります。

整形(6)

出力された CSV を開き、列を並べ替え、不要な列を消し、既存のシートへ貼る。転記がなくなったと思ったら、別の場所に転記が復活していたというのがこの工程です。出力の形を自社の集計表に合わせられるかどうかで、この時間はゼロにも 1 時間にもなります。

探す(7)

「あの会社の先月分の請求書」を探す作業です。1 回 5 分でも、月に 20 回あれば 1 時間半。フォルダとメールと会計システムを行き来している限り減りません。取引先・期間・種別で絞り込める一覧があるかどうかの問題です。

手を付ける順番

すべてを一度に変えようとすると、プロジェクトは止まります。効果の大きさと着手の容易さで並べると、順番はおおむね次のようになります。

  1. 受け取りの自動化(1・2): 転送設定を 1 回するだけで、以後は人が触らない
  2. 確認範囲の絞り込み(3・4): 入力と検算をまとめて短くする、効果がいちばん大きい組み合わせ
  3. 出力形式を自社の形に合わせる(6): ここを揃えないと、削った工数が戻ってくる
  4. 突き合わせ(5): 効果は大きいが、前提として帳票種別と取引先が揃っている必要がある
  5. 検索・履歴(7): 上の 4 つを進めた副産物として自然に手に入る

現場のパターン別に、時間の行き先は違う

同じ「月 100 枚」でも、業務の形によってどこに時間が集中するかは変わります。自社がどれに近いかで、手を付ける順番が変わります。

パターン A: 取引先が多く、1 社あたりの枚数が少ない

取引先 60 社から 1〜3 枚ずつ届く形です。ここでは受け取りと仕分け(1・2)の比重が突出します。様式も 60 通りあるため、帳票定義が必要な方式は初期設定だけで数十時間かかります。事前定義が不要な方式の効果がもっとも大きく出るパターンです。

パターン B: 取引先が少なく、1 社あたりの明細が長い

取引先 5 社から、明細 100 行の請求書が届く形です。ここでは入力と検算(3・4)が支配的です。1 枚あたりの明細数が多いため、確認範囲を絞れるかどうかが工数を決めます。全件目視のままなら、AI-OCR を入れても効果は限定的です。

パターン C: 締めの直前に集中する

月末 3 日間に 80 枚が集中する形です。ここで効くのは平均時間の短縮より、滞留を作らないことです。届いた時点で自動的に取り込まれていれば、締めの日にやる作業は確認だけになります。受け取りの自動化の価値がもっとも高いパターンです。

よくある反論と、その答え

「うちは枚数が少ないから、投資に見合わない」

枚数が少ない現場ほど、その作業が専任ではなく他の業務の片手間になっています。片手間の作業は中断が多く、1 枚あたりの実時間は枚数の多い現場より長くなりがちです。また、枚数が少ないと属人化しやすく、担当者が休むと止まります。判断材料は枚数ではなく、「その人が休んだら誰がやるか」です。

「Excel で受け取れるよう取引先に頼めばいい」

有効な手ですが、立場が強い側でないと通りません。取引先に様式を変えてもらう交渉のコストと、こちら側で読み取る仕組みを持つコストを比べて選ぶことになります。多くの場合、後者の方が確実で速く済みます。

「AI が間違えたら誰が責任を取るのか」

正しい問いです。答えは「間違いが人に見える形で示され、人が確認して確定する工程がある」ことです。AI が最終確定するのではなく、人が確定する。この構造であれば、責任の所在は従来と変わりません。逆に、この工程を持たない製品は、この問いに答えられません。

効果を測るときに見る数字

導入の効果を「楽になった」で終わらせないために、次の 3 つを導入前に測っておいてください。

  • 締めにかかる日数: 月初何営業日で締まっているか
  • 手で触った帳票の割合: 100 枚のうち、人が値を直した枚数
  • 月末に遡って発覚した漏れ・誤りの件数

1 番目は経営に、2 番目は運用の改善余地に、3 番目は品質に対応します。枚数あたりの処理時間だけを見ると、締めの日数が変わっていない事実を見落とします。

まとめ

請求書処理の工数は、入力そのものより、受け取り・検算・整形・探索に分散しています。入力だけを自動化しても、前後の工程が残っていれば体感は変わりません。

DropOCR は、メール転送での取込から確認グリッド自社フォーマットでの出力までを一続きにすることで、この分散した工数をまとめて減らすことを狙っています。

  • 請求書処理
  • 業務改善
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